≪ことばのこと≫#7「サイセッキン」

久しぶりの更新になりました…

先日、休みを利用して久しぶりに、大分・熊本へ。季節はいつの間にか、晩秋から初冬へ。名残の紅葉を堪能してきました。

穏やかな風景ですが、思い起こせば、この1年は自然の猛威をまざまざと見せつけられた年。「西日本豪雨」そして次々に列島を襲った台風。毎週のように大型台風接近の情報をお伝えした時期もありました。

そんな中で気になった言葉が「最接近」。

新聞記事では当たり前のように目にする言葉ですが、「台風が福岡県に『最接近』するのは、あすの午前中とみられます」などと、放送でも時々登場しました。

文字を見れば、「最も接近する」と、一目でわかりますが、音声で「サイセッキンン」と言われても、耳になじみのない言葉です。

時に、人の命にもかかわる情報だからこそ、放送では、誰にでも伝わりやすい、耳で聞いてわかりやすい言葉を使うことが大切なのです。

ある日、「ももち浜S特報ライブ」の気象情報でおなじみ、気象予報士の益山さんにこのことを話すと、ハッとさせられる答えが返ってきました。「再接近と区別がつきませんね。迷走台風ではある地点に再び接近するという台風もあります」そういえば数年前、そんな台風もありました。さらに今年は、通常と反対の東から接近する台風もありました。

これまで経験したことにない災害が起こることもある今の時代だからこそ、視聴者に確実に伝わる言葉を選ぶことが大切です。

 

 

 

 


≪ことばのこと≫#6「1分、2分、3分…」

プロ野球も開幕。本格的なスポーツシーズン到来です。TNCでもプロ野球のホークス戦をはじめ、この春も様々な種目のスポーツをお伝えしています。

私も、4月22日(日)の深夜1:00から放送の、

「社会人アメリカンフットボール

    オーパーツ福岡SUNS 対 エレコム神戸ファイニーズ」

九州初開催の、アメリカンフットボールXリーグ春季交流戦の実況を担当します。先日も、オーパーツ福岡SUNSの練習取材へ…

さて今回は、スポーツ中継の放送席でのお話…

放送開始時刻が近づくと、放送席でアナウンサーに指示を出すフロアディレクター(FD)が、放送までの時間を伝えてくれます。

その日も、若いFDが「本番5分前です!」と大きな声。その声で気持ちも引き締まりますし、アナウンサーも放送に向けての最終チェックに入ります。その1分後、再び元気いっぱいに「ヨンフン前です」。ん?最近の若い人はそうも言うわなあ…と、聞き流したものの、その1分後「サンフン前!」。

ちょっと待て!本番前はこちらも細かいことが気になってしまう。FD君に「それは、ヨンプン、サンプンだよ」と、少々きつい口調で言ってしまった…

そして、その1分後…

「よろしくお願いします!本番ニプン前!」

本番直前、あやうく椅子から滑り落ちそうに…

「1分、2分、3分…」前がつまる音「っ」と、「ん」の時だけ「プン」になるという簡単な法則なんですけどね。

あれから10年近く…今や若い人たちは当たり前のように、「サンフン」「ヨンフン」。放送でもごくたまに耳にするほどです。これも日本語の変化なのでしょうか。

アナウンサーが日本語を変えるのではなく、日本語の変化に最後方からついていく。その心を大切にしていきます。

 


≪ことばのこと≫#5 「漢字、ひと文字の違いで…」

仕事柄、言葉には敏感です。デスク回りには数冊の辞書があるのですが、今年に入って加わったのが、「広辞苑」第7版。今年1月に発売されました。10年ぶりに改訂された今回、新たに1万語が追加され、トータルで25万項目の言葉が収録されているのだそうです。

アナウンサーとして、それらの言葉を使いこなしているのかと問われると、まだまだです。言葉の読み方や使い方を確認するために毎日のように辞書を引きます。

若い頃は言葉で大失敗もしました。夕方のニュースキャスターを担当していた当時、「他人事」をうっかり「タニンゴト」と読んでしまい、当時の上司から「ニュースキャスターを務める君のような中堅にあるまじきミス」と、こってり絞られました。

広辞苑で「他人事」を引くと、『近年、俗に「他人事」の表記に引かれて「たにんごと」ともいう』とありますが、最新版でも俗語扱いです。最近は、テレビや新聞では「ひと事」という表記をするようになりつつありますが…

こんな私ですが、キャリアを重ねると、自分のことは棚に上げて若いアナウンサーやスタッフの言葉に「おやおや…」と思うことが増えました。

ある日のこと…。日差しの強い屋外での収録で、インタビューの相手を待つ15分ほどの間、カメラから5~6メートル程離れた日陰にいるとスタッフに伝えて最終準備。そこに若いスタッフが、あと数分で準備が整うことを私に伝えるために戻ってきました。「川崎さ~ん、どこですか?」と。「ここだよ」と告げたのですが、間髪を容れず一言。「あっ!見損ないました」…と。

この一言で、周囲には笑いが起こり、インタビューも和やかに。若いスタッフは「(一瞬)見失いました」と言いたかったのでしょうが、あれから1年近くが過ぎた今でも、ふと思います。もしかしたら、あれは彼の本音ではなかったのかと…

アナウンサーは、日本語と格闘する日々なのです。

 

 

 

 

 

 


≪ことばのこと≫#4 「七…何と読む?」

ここ数年、月に一度、茶の湯と向き合う時間を持っています。日本古来の和の文化に触れ、集中するひと時は、今やなくてはならないものになりました。お茶を起点として日本の伝統への興味も広がりました。と言っても、お茶の木そのものや、お茶を飲むという習慣は、その昔、中国から入ってきたものです。

ところで、皆さんもご存じのとおり、日本語にも日本古来の読み方(=訓読み)と、中国から入ってきた読み方(=音読み)があります。

先日のこと、後輩アナウンサーから段位の「七段」は「ナナ」か「シチ」かという質問を受けました。「ナナ」は日本古来の「ななつ」からきた読み方、一方の「シチ」は漢語の読み方です。放送でよく出てくるのは、囲碁や将棋あるいは柔道、剣道の段位。この場合は「シチ」のほうがふさわしく感じます。念のためフジテレビ系列のアナウンサーが使っている放送用語のハンドブックを確認すると、段位の「七段」はやはり「シチ」で統一していました。

ちなみにハンドブックでは、「七位」(官位名」「七回忌」「七代目」「第七日」「七年」(「ナナネン」も)「七人」「七里」などは「シチ」と読むと統一しています。

数字を「0」から読み上げていくと、「レー・イチ・ニ・サン・シ・ゴ・ロク・シチ・ハチ・ク・ジュウ」。我々の世代だとお風呂から上がる時に、十数えなさいと親に言われたものです。「初段、二段、三段…」と数えていくと、やはり「シチ」が本来なのです。一方、日本古来の数え方でいくと「ヒトツ・フタツ・ミッツ・ヨッツ・イツツ・ムッツ・ナナツ・ヤッツ・ココノツ・トー」ですね。ただ、最近では「シ」の代わりに「ヨン」、「シチ」に代わって「ナナ」という言い方も広まっています。

今、私たちが使っている日本語は、このように日本古来のものと、大陸から入ってきたもの、さらに明治以降西洋から入ってきた言葉が融合しているものなのです。それが顕著に表れている例をひとつ。これは井上ひさしさんも著書でお書きになっていたのですが…

10からカウントダウンすると…「ジュー・キュー・ハチ・ナナ・ロク・ゴ・ヨン・サン・ニ・イチ」と、あら不思議。「ナナ」であり「ヨン」が自然なのです。そしてさらに、「0」は「ゼロ」。「もう幾つ寝るとお正月」のように数えることが普通で、元々カウントダウンの文化が日本になく、比較的最近の文化だからなのでしょうか。

日本語は、なんとも奥深いことばなのです。冒頭の「茶の湯」。「茶道」という言い方もしますが、「サドウ」「チャドウ」二通りの読みかたを耳にしますね。これについては、また次の機会に…

 


≪ことばのこと≫#3 「具と具材」

毎週日曜日の午後3時から放送の「競馬BEAT」。この冬の小倉競馬場からの放送は、3月4日が最終日。出演者、スタッフを合わせるとかなりの人数になるため、毎週の昼食は弁当。先日は、かしわめしの弁当をいただきました。

九州の名物、鶏のスープの炊き込みご飯の上には、細かく刻んだ鶏肉、海苔、そして錦糸卵。この錦糸卵、かしわめし以外にも、ちらし寿司や冷やし中華などの具としてかかせないものですが、最近は「具」という言葉の代わりに「具材」という言葉をよく耳にします。

ネットで検索すると、『具材たっぷりの中華風炊き込みご飯』『8種の具材が入った豚汁』『ホタテやアサリなどの海鮮具材をトッピング』などといったフレーズが出てきました。しかし、これらの例はよく考えると、「具材」ではなく「具」で通じるのではないでしょうか。

最新の「広辞苑」第7版で、単純明快な解説を見つけました。

具:汁や五目ずしなどの中に入れたりピザにのせたりするたね

具材:料理の具に用いる材料

ということは、先程の中華風炊き込みご飯や豚汁はまだ出来上がっていない状態を指すことになります。さらに3つめは、何かのメニューに生のホタテやアサリをのせたもの、ということに…。いずれにしても、正直そんなにおいしくなさそうに感じてしまいます。

放送で使う言葉でも、時折「具」と「具材」を混同した表現に出会います。以前、フジ系列の放送用語に関する会議の席で、アナウンサーの大先輩から「具」と「具材」について、とてもわかりやすい具体例を教えていただきました。

ちらし寿司であれば、「具」は錦糸卵。「具材」は錦糸卵に料理する前の卵。

「具」と「具材」。言葉として口にするとわずかな違いですが、放送ではしっかりと使い分けたいものです。

それにしても、かしわめし、いつ食べてもお味は「goo!」です。

 

 

 

 


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